月に一度のお楽しみ、シネマ歌舞伎。今月の『刺青奇偶』は旧作上映なんだけど勘三郎/玉三郎/仁左衛門の組み合わせで東劇も結構な入り。いつも閑散なのにね。感想↓
今年2月鑑賞の『
籠釣瓶』と同じ大御所役者三名の組み合わせ演目だから当然か。
博打好きの半太郎(勘三郎)が、借財のかたに売られかけて逃げている酌婦のお仲(玉三郎)を偶々見かけて救い出す。
散々辛酸をなめて男を信じられくなって不貞腐れるお仲だが、見ず知らずの自分に衒いのない思い遣り・気遣いを見せ金まで与えて立ち去ろうとする半太郎に恋心を抱く。
最初はつっけんどんなお仲が徐々に女になっていく様。
細かいことを気にせず、貧乏で明日の生活がどうなるかも分からないのに一日一日を明るく軽妙に生きる。この半太郎が典型だけど、歌舞伎の世話物に出て来る「良い人」を見ていると、物質的な豊かさに恵まれても一方で何か満たされない現代人、その根本は気持ちの有り様にあるんじゃないかと改めて思う...みたいな理屈は抜きにして楽しくなってきてしまう。やっぱり世話物が好きだ。
そんな半太郎にお仲が惚れるなと言う方が無理と言うもので二人は所帯を持つがお中は病を得て死の床に。
博打はもう止めてと願うお仲は半太郎の右腕にサイコロの刺青を入れるが半太郎はお仲の為に金が欲しい。で結局、最後は大勝負!...と最後は博打かいなのだけれど、半太郎の滂沱の涙の迫真。鼻水ダラダラで『籠釣瓶』のあの縁切りの場を思い出した。
あまりの迫真ぶりに見物している方が気圧される。このタイトルも上映期間は一週間。もう一度見物したいけど....
分かりやすさ・・・★4
歌舞伎らしさ・・・★4
総合・・・★4