秀山祭九月大歌舞伎(夜の部)

前日体調不良から復活し、夜の部へ。

三部構成で吉右衛門丈の島流しモノ「俊寛」を舞踊二編でサンドイッチと言う珍しいパターン。正直、筋書き読んでもソソられなかったんだけど、夢見心地の体験が待っていた。続き↓
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<松寿操り三番叟> 16:30-16:48

まずは軽めの舞踊、この演目は今年の新春浅草歌舞伎で見物している。

脇役は違うが、操り人形のユーモラスな動き、操り紐が絡まっちゃうとかメインキャラ・プロットは同じ、浅草は人形役は種之助くんで若かったが今回は幸四郎のお兄さん。幸四郎丈が上手いのは当然として種くんの三番叟も良かったなあと思い出す。

人形故の「無表情」にも注目。

同じ演目でも役者によって受ける印象は全く異なるので良い演目は何度でも見物したいもの。歌舞伎趣味=蓄積系の妙味。

総合評価・・・★3.5

<平家女護島 俊寛> 17:08-18:25

近松門左衛門作の元は人形浄瑠璃。秀山祭だから、吉右衛門丈の当たり役、本日のメインディッシュ(の筈だった)。

お話は非常に分かりやすい。栄華の絶頂を誇る平家に対する陰謀を企てたとして流刑になった僧・俊寛(吉右衛門)と丹波少将成経(菊之助)、康頼(錦之助)。

平清盛の娘・徳子懐妊で安産祈願の為に大赦が行われ、首を長くして待っていた赦免船が漸く到着。ああ、これで京に帰ることが出来る、残してきた妻に再び会えると思ったのも束の間。

昨日見物した「河内山」とは異なり、流罪生活の厳しさでボロボロヨレヨレになった高僧・俊寛はその心中・哀感・絶望を体で表現・文字通り「体現」、赦免状で名前呼ばれず落胆・備前まで戻れることになり復活したと思ったら、成経が島で知り合い結婚した海女・千鳥を連れて行くことを上使の瀬尾(又五郎)に拒まれ、更に都に残してきた妻は瀬尾に討たれていたことを知りまたもや絶望。

独り島に残る運命を嘆く千鳥に俊寛は結句いたたまれず、妻の仇でもある瀬尾を遂には斬り伏せてしまう。

最愛の妻亡き今、現世の望み絶えた俊寛は自身の身代わりに千鳥を船に乗せ島に残る。船を見送るラストで回り舞台が断崖上の俊寛を演出するシーンでは、友の妻を代わりに船に乗せた潔く徳の高い僧から、「俺も帰りたかった...」を声に出さずとも全身で表現する平凡人・素の俊寛に戻る様が絶品・絶後の演技。

総合評価・・・★4
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<新作歌舞伎舞踊 幽玄 羽衣 石橋 道成寺> 羽衣19:00-19:44 石橋/道成寺20:04-20:58

『俊寛』の圧巻のラストですっかり今日の仕事は終わった気分。歌舞伎舞踊はインターミッションと言うか中休み位にしか思ってなかった歌舞伎初心者が衝撃を受けたのは『羽衣』の幕が開いて直ぐ、太鼓集団「鼓童」の面々(十二人位いたかしら)が一糸乱れず叩きまくる打楽器連打が始まってから。

三保の松原で天女と漁師が巡り会い、漁師が手に入れた天女の羽衣を天女に返すまでを描く優美な舞踊に打楽器が完全融合。

行き交い、陣形を組むかのような漁師たちと絶妙の距離をとる天女(玉三郎)を回り舞台に配し、段々と鋭く高鳴って行く打楽器連打と舞台の回転・場面転換は見たことの無い静と動の融合で自分の中でも「何だこれは」感が止まらず。そう、この世のものならぬ幽玄の世界を垣間見てしまったような気分。

図らずも口を開けてポカンと見物していた私。40分余りの舞台はあっという間に終わり我に帰る。しかしここでは終わらなかった。

『石橋』は衝撃の一言。中村歌昇らが演じる獅子の精=荒ぶる連獅子五頭が登場するや鼓童たちの大中小太鼓の乱打と言いつつこれまた統制された激し過ぎるパーカッションが走り出す。舞と音の狂走。

文字通り猛り狂うタテガミと太鼓。口を開けた挙句、涎も垂れていたかもしれぬ。余りの勇壮・スペクタクルに涙も出てきた。

名残惜しく獅子退場の後、〆は『道成寺』。シネマ歌舞伎で五人で演るパターンを観ていたけど勿論今回は姫は玉三郎丈一人。鼓童太鼓は三名・乱打乱打で清姫の怨念・情念を燃え上がらせる。あのチントンシャンな道成寺とは全く異なる、鬼になる前から恐ろしく・そして美しい清姫・道成寺。

着物のシワまで美しい玉三郎丈の優美さが鼓童三人の間を行きつ戻りつ。快音と媚(美)態が撹拌されて、視覚聴覚にあり得ないほどの心地よい刺激を受け、トランス状態になった上での大団円。

太鼓集団・鼓童の存在は不明にして初めて知ったが、その道では有名らしい。YouTubeで動画・演奏を見ることは出来るが舞台・間近で観たパフォーマンスは異次元だった。文字通りの「幽玄」。

舞踊と打楽器の融合と言うが、その融合を遥かに超えた化学反応を経て見たことが無い芸術に昇華した舞台が確かにそこにあった。しつこいようだが幽界を垣間見た気分。忘れられない経験。まだチケットが残っている...

総合評価・・・★5
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by hatcho_bori | 2018-09-17 22:39 | 歌舞伎 | Trackback | Comments(0)
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