去年は五月に
コクーン歌舞伎があったけど今年は無し。その代わりに?天王洲の寺田倉庫、それから歌舞伎町のライブハウス「新宿FACE」でオフシアターの歌舞伎。中村獅童の超歌舞伎に続く意欲的取組。演目は近松門左衛門の名作「女殺油地獄」。私は未見なので演目含めて凄く楽しみにしていた。
新宿FACEはかつてのコマ劇場前の広場に面した雑居ビルの中のライブハウス。ミラノ座がまだあった頃はちょくちょく来てたけどこの辺りも変わったな。で、オフシアター歌舞伎は正に異空間・異次元の体験でした。続き↓
16:00-17:45、休憩無しの通し上演。15:15開場少し前に行ったら白塗り前の壱太郎くんが居てちょっとビックリ。
客席は全てパイプ椅子。チケット予約時に見た会場見取り図で「近いな...」とは思っていたけど実際現場に立つと想像以上の近さ。因みに私は↓以下の写真、右側観客席の最前列。舞台を四方から囲む形で観客席が配置されているので一体どっちが「メイン」になるんだろう?と思ってたんだけど...
結局、私が陣取ったところが「正面」みたいな感じではあったけど、その他の方向からでも十分楽しめたかと。一応花道的な役者の出入り口はあるんだけど、役者の入退場は四方八方で↓ステップを踏んで舞台に上がる。私の席は役者さんにぶつかりそう。大・大迫力の臨場感。
で、「油地獄」のお話は油屋(河内屋)の放蕩息子・与兵衛=中村獅童が、遊びで拵えた借金の返済に困り、同業・豊嶋屋の女房・お吉=中村壱太郎に借金を申し込むが断られて逆上、お吉を手にかける、という流れ。
与兵衛は放蕩の挙句、両親から勘当されてしまうが、結局息子を案じて両親はお吉に与兵衛がもし現れたら家に戻るよう諭してほしいと銭まで預けていく。そのやり取りを物陰で聞いていたのに、その直後それだけでは借金の返済に不足するとお吉に融資を頼み土下座、断られて凶行に及ぶ。
享楽的で粗暴で短慮な与兵衛は仁左衛門の当たり役(私は未見)だけど、獅童の与兵衛、良かったな。愛嬌がある半グレは正に嵌まり役でしょう。壱太郎くんはお吉に加えて与兵衛が入れ上げる芸者小菊の二役。二十七歳・色気あるしっかり女房設定のお吉・与兵衛を手玉にとる小悪魔・小菊、実年齢に近いからリアリティがあるね。
「油地獄」は去年の関西公園がシネマ歌舞伎化されて秋上映されるのでそちらも楽しみだな。
与兵衛が捕縛されるラストまであっという間。最初、役者があまりにも近くて戸惑ったけどあっという間に舞台に没入、殺しの場に居合わせた目撃者の気分。中高年歌舞伎ファンは勿論だけど場所柄若いお客さんも多くて、歌舞伎啓発活動にはモッテコイの演目かも。勿論、イヤホンガイドは無し(台詞は全て現代語)、筋書きも無し、パイプ椅子の上にリーフレットが置いてあるだけだけど義太夫、三味線、ツケ打ちはバッチリ揃ってる。
こういう歌舞伎も良いな。大満足。